和算家「徳久知弘」
愛媛和算研究会では、現在、大西佐兵衞著『雑題』(三十巻)を読んでいます。この書は、1801年頃から松山藩で秘伝の書として門弟たちが写し合い、和算の習得に励んだと伝えられています。松山藩の本格的な和算研究は大西佐兵衞(『続神壁算法』掲載算額)で始まりました。『雑題』は藩校「明教館」に保管され、現在、愛媛県立図書館に所蔵されています。
奈良平安時代から江戸時代までの数学史を記した『明治前日本数学史』(日本学士院)には、和算書や和算家の業績が詳細に述べられています。その中には大西佐兵衞(『古今名人算者鑑』)や『雑題』の名前はありませんが、愛媛県で唯一取り上げられた和算家がいます。それが伊予宇和島藩士の徳久知弘です。
ここで、徳久知弘が著した和算書について述べたいと思います。
『明治前日本数学史』に掲載されている和算書は、『十字環解』、『十字環積解』、『量地三角術用法解』、『弧三角通』、『測天義解』、『弧三角術象解』の6冊です。
ところが、『補訂版 国書総目録』(岩波書店)によると、これら6冊よりも早い時期に著された『算法雑題答術』四巻が存在することが分かりました。
また、『弧三角術象解』は、『弧三角通』と『測天義解』の組立型紙が入っている箱であり、和算書ではありませんでした。
したがって、徳久知弘が著した現存する和算書は次の6冊になります。
和算家としての徳久知弘を知る契機となった日本数学史家三上義夫の遺稿と人物紹介を「伊予宇和島藩士「徳久知弘」―「測天義解序」をめぐって―」としてまとめましたので、こちらからご覧ください。